個人再生と任意整理の違いでいえば、借金の減額効果です。
任意整理は将来にわたり支払う利息分のカットのみとなりますが、個人再生は利息分の他、元金を含めて減額することができ、借金の額が多ければ多いほど、減額効果は高くなります。
個人再生の減額効果は最大で10分の1まで借金を減らすことができるため、任意整理では減額効果が薄い方や、自己破産をしたくても免責不許可となる可能性が高い方、そして住宅を手放したくない方には有用な債務整理と言えます。
一見するとメリットのある個人再生ですが、任意整理と比べ、手続きは個人再生の方が難しく、完了するまで時間がかかることや、整理したい借金を除外できないなどデメリットもあります。
このページでは個人再生と任意整理を比較、個人再生が向いている方についてご説明いたします。
個人再生と任意整理の特徴を比較
個人再生と任意整理はどのような債務整理なのか?各々の特徴について見きましょう。
個人再生の特徴とは
個人再生は自己破産のように借金をゼロにすることは出来ませんが、任意整理と比べると減額効果が高い債務整理であり、借金の総額が5,000万円を超えない場合に利用できます。
借金総額 | 個人再生後に残る借金 |
100万円未満 | 借金総額 |
100万円~500万円以下 | 100万円 |
500万円~1,500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1,500万円~3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円~5,000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
上記表をご覧の通り、減額効果が大きくなるのは500万円以上の借金総額がある方であり、500万円以下の借金総額であっても、借金総額が100万円以下の方であれば、減額効果はありません。
また弁護士や司法書士に依頼した際の費用も高くなるため、借金が多い方でなければ向きません。
費用については後ほどご説明いたします
また個人再生の場合は自己破産とは違い、資格制限もありません。
資格制限がかかると士業(弁護士・司法書士等)、生命保険募集人、警備員といった職種の方は一定期間、職務につけませんが、個人再生ではその心配はありません。
個人再生で減額された借金は3年間~5年間で返済していきます。
借金(債務)総額 | 減額後の借金(債務)総額 | 月々の返済額(返済期間3年の場合) |
100万円 | 100万円 | 約28,000円 |
300万円 | 100万円 | 約28,000円 |
500万円 | 100万円 | 約28,000円 |
700万円 | 140万円 | 約39,000円 |
1,000万円 | 200万円 | 約56,000円 |
1,500万円 | 300万円 | 約84,000円 |
2,000万円 | 300万円 | 約84,000円 |
3年間で返済が難しい場合は裁判所の判断次第となりますが5年間で返済が出来る場合もあります。
収入や家計の状況などから毎月返済していけるように返済期間が設定されます
任意整理の特徴とは
任意整理は借金の将来にわたり発生する利息をカットすることで借金を減額できる債務整理です。
つまり減額された後の借金が元金だけとなるため、返済していけばいくほど借金がなくなります。
利息がある場合、返済してもなかなか元金が減らず、返済の長期化、返済総額も増えます
手続きも個人再生よりも簡易であり、ご自身で行うこともできますが、債権者(貸し手側)との交渉次第で減額できる金額や返済期間が決まるため、任意整理を知る弁護士や司法書士に依頼したほうが、希望に沿う任意整理はできるでしょう。
任意整理後には減額された借金を原則3年間(36回)~5年間(60回)で返済していきます。
毎月で返済していける返済額を設定するためにも、返済期間はよく考えて設定しましょう。
ただし5年以上の長期間の返済には応じない債権者もあるため、債権者(貸し手側)との交渉次第となります
個人再生、任意整理のメリット、デメリットとは
- 借金が大幅に減額される
- 減額される借金は利息だけでなく元本も対象となる
- 住宅ローンを支払っている場合でも持ち家は残せる
- 資格制限を受けないため、仕事に支障をきたさない
個人再生は自己破産と違い、住宅ローンを支払い中の方でも持ち家(住宅)を手放さずに済む住宅ローン特則など独自のメリットがあります。
住宅ローン特則は住宅ローンを支払い中の方でも住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用することで持ち家を手放すことなく、借金を減額できます。
- 借金総額が5,000万円を超える場合は利用できない
- 借金総額が少ないと減額効果は薄い
- 弁護士費用の他、裁判所に支払うなど費用がかかる
- 一定期間、ローンやクレジットカードが利用できなくなる
- ローンで支払い中の物は回収される(住宅以外)
- 財産がある方は減額効果が薄くなる
- 官報に掲載される
個人再生に限らず、自己破産、任意整理を行うことで、現在利用中のクレジットカードは利用できなくなります。またローンの新規契約やクレジットカードの契約が5~約10年間はできなくなります。
ローンで買った物が支払い中の場合に債務整理を行うと、ローン会社に所有権がある物は没収されます(個人再生では住宅ローンを除く)。
自己破産のように財産は没収されませんが、処分した際に価値のある高額な財産を所有している方の場合、先ほど紹介した減額基準まで減額されない可能性があります。
これは「清算価値保障原則」が適用されるためです。
個人再生は自己破産と同様に「官報」に掲載されます。掲載される情報は個人再生を行った情報、氏名、住所、担当した弁護士事務所等です。
官報はインターネット版もあるため、知っている方なら誰でも閲覧できます
- 利息をカットし返済できる
- 手続きの手間がかからない
- 弁護士、司法書士に支払う費用負担が少ない
- 整理したい借金を選ぶことができる
- 官報に掲載されない
- 家族や他人に知られにくい
個人再生に比べ、手続きの手間がかからず、費用もかかりません。
費用については後ほどご説明いたします
個人再生と違い、整理する借金を選ぶことができるため、任意整理の対象にしたくない支払い中のローンなど外すことができます。
また官報に掲載されることもなく、債権者とのやり取りも弁護士や司法書士に依頼することで自宅等に連絡がくることもないため、家族等に知られるリスクも低くなります。
自宅に届く郵便物も弁護士事務所等に送付してもらうことでより知られるリスクを減らすことができます
- 思っていたよりも借金が減額されない可能性がある
- どのくらい減額されるか?返済期間は債権者との交渉次第
- 一定期間ローンやクレジットカードが利用できなくなる
- ローンで支払い中の物は回収される
減額の対象となるのが利息であるため、元々、低金利で借りている場合や返済を延滞していない方の場合は減額効果が薄くなります。
任意整理は減額、返済期間は債権者との交渉で決まるため、希望する結果にならない可能性が高くなります。
個人再生か任意整理、どんな方が利用すべきか
個人再生を利用すべき方は以下のような方です。
- 借金総額が多い方
- 住宅を失いたくない方
- 自己破産で免責不許可になってしまう可能性がある方
- 資格制限を受けたくない方
任意整理を利用すべき方は以下のような方です。
- 整理したい借金を選びたい方
- 家族に知られたくない、迷惑をかけたくない方
- 高金利で借り入れしている借金のある方
ちなみに個人再生、任意整理ともに借金は減額されるものの、返済は生じるため、返済していける安定した収入があることが利用条件となります。
また債権者との交渉が必要となる任意整理、個人再生においては専門的な知識、手続きも必要となりますので弁護士等へ依頼すべきでしょう。
まとめ
個人再生と任意整理の特徴、違いを表にまとめてみました。
個人再生 | 任意整理 | |
利用条件 | 安定した収入があること 返済の意思があること 借金総額5,000万円以下(住宅ローン以外) | 安定した収入があること 返済の意思があること |
減額対象・割合 | 元金・利息共に減額 借金を80~90%減額 | 利息 |
返済期間 | 原則3年(延長処置で5年) | 3~5年 債権者との交渉次第でそれ以上になる可能性有り |
減額の範囲 | 全ての借金が対象 | 整理する借金は選べる |
高額財産の差し押さえ | なし | なし |
裁判所の介入 | あり | なし |
官報への掲載 | あり | なし |
信用情報機関への登録 | あり | あり |
司法書士の取り扱い | 可能 | 可能 ただし1社あたり140万円以下 |
個人再生は任意整理と違い、利息だけでなく、元金も含め減額されます。借金が多い方で返済期間が3年~5年の間に完済できない場合は任意整理ではなく、個人再生を選ぶべきでしょう。
ただし借金総額が200万円以下の場合は個人再生にかかる費用と減額効果を照らし合わし、本当にメリットがあるかを考えましょう。
個人再生は弁護士へ依頼するメリットがあります。手続きを任せられるだけでなく、個人再生委員の費用も安く抑えることができるからです。
任意整理は借金総額が一件あたり140万円以下で訴訟にならない場合であれば、司法書士に依頼するのも一つ、費用は安くなります。
140万円以上を超える、訴訟が必要となる場合は弁護士に依頼することで、全て任すことができるためご自身の負担は減らせます。
個人再生、任意整理のどちらを選択すべきか?お悩みの方は当弁護士事務所までお気軽にお問い合わせください。