弁護士と司法書士で任意整理を依頼した時の違いとは

任意整理

任意整理はご自身でも手続きできますが、手続きの手間だけでなく、借り入れ先(債権者)との和解交渉も考えますと弁護士、司法書士へ依頼することでスムーズに手続きを進めることができます。

弁護士、司法書士、どちらに任意整理を依頼するかですが、任意整理を考えている借金総額が1件あたり140万円以上であれば、司法書士では取り扱いできません。

もし任意整理で借金問題を解決できない場合、自己破産や個人再生など他の債務整理を考えた時も同様に弁護士、司法書士で取り扱える範囲に違いもあります。

また費用面でも弁護士と司法書士では異なります。その一つが減額報酬の有無です。比較すると弁護士に依頼した際は費用が高くなる傾向があります。

任意整理は借金がゼロになるわけではなく、減額された借金を返済していかなければならないため、支払いの負担が少なくなりますが、弁護士や司法書士へ支払う費用も頭に入れておく必要があります。

では任意整理を考えた際、弁護士か司法書士に依頼した場合は何が違うのか?また選ぶ際に注意しておきたいことなど詳しくご説明いたします。

弁護士、司法書士に任意整理を依頼しても基本は同じ

弁護士、司法書士いずれに任意整理を依頼しても、任意整理自体の手続きやメリット、デメリットは変わりません。

任意整理の手続きと流れ

  1. 任意整理の相談
  2. 委任契約
  3. 債権者への受任通知・債権調査
  4. 和解交渉開始
  5. 和解
  6. 債権者へ返済

手続きの流れはまず任意整理の相談(法律相談)を行います。任意整理の法律相談は無料で対応してくれる法律事務所も多いため、まずは法律相談を受けましょう。

法律相談時に任意整理する際の費用がどのくらいになるのか把握するためにも、

  • 借り入れ先(債権者)はどこか?
  • どのくらいの借金があるのか?
  • いつから借り入れしているのか?

を事前にわかる資料などを用意しておきましょう。

借り入れ先の情報がわかる資料としては現在利用している借り入れ先の契約書他で確認しましょう(カード等もあれば用意しておきましょう)。

有料(1,000円程)ですが、CICなど信用情報機関から開示請求できる「信用情報」も一つです。

正確に把握するのであれば、債権者から取り寄せできる「取引履歴」がありますが、取引履歴は任意整理依頼後、弁護士等が借金(借入残高)調査時、手続きしてくれます

委任契約は弁護士や司法書士に任意整理を依頼することを指します。法律相談時から引き続き手続きを行う場合は相談時に提出した資料から、任意整理する債権者を選び、任意整理を進めていきます。

委任契約後は債権者(借り入れ先)へ受任通知を送ります。受任通知が債権者に届ければ、催促や返済が止まります。

貸金業法第21条1項9号で催促等できない旨が定められています

【貸金業法第21条】
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

~1項9号~
債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

引用元:e-Gov

もし返済を自動引き落としに設定しているのであれば、引き落とし口座の預金残高をゼロにしておく、もしくは口座の金融機関に自動引き落としされないよう手続きしておきましょう。

金融機関(銀行等)に自動引き落とし停止を依頼する場合は通常、身分証明書、通帳、銀行届出印が必要となりますが事前に金融機関に確認しておくのが確実です

受任通知により債権者への返済が止まる代わりに、依頼する弁護士や司法書士へ費用を支払っていきます。

費用の支払いは分割払いに対応してくれる法律事務所もあるため、負担のない費用返済方法を話し合いましょう。弁護士、司法書士の任意整理費用については後ほど詳しくご説明いたします。

基本的に弁護士や司法書士に任意整理を依頼すれば、ご自身で手続きする事はありません。債権者との減額、返済期間(分割払いの回数)の交渉も全て行います。

交渉の結果が債務者(ご自身)と債権者の双方が納得できれば、和解が成立します。和解成立となれば、和解の内容を書面として「和解書(合意書)」を作成します。

和解書の例
出典:書籍 自己破産と借金整理を考えたら読む本 より

和解後は和解した内容に従い、債権者へ返済していきます。

もし和解した返済が難しくなったときには必ず依頼した弁護士に相談しましょう。返済ができないからといって放置はしないようにしましょう。

和解した内容での返済が難しくなった場合は他の債務整理(個人再生や自己破産)も検討しましょう

任意整理のメリット・デメリット

任意整理のメリット
  • 利息分をカットすることで借金を減額できる可能性がある
  • 遅延損害金を免除出来る場合もある
    催促が止まる
  • 他の債務整理よりも手続きが簡単
  • 財産を没収(差し押さえ)されない
  • 整理したい借入先(債権者)を選べる
  • 家族や職場、他人に秘密にしやすい

任意整理は他の債務整理(個人再生や自己破産)とは違い、裁判所を通さず手続きできるため、手続きは簡単です。

弁護士に依頼している場合であれば、仮に訴訟(裁判所へ申立をされた場合)になった場合でも弁護士が代理出廷できるため、全て対応を任せることができます。

弁護士や司法書士に依頼している場合は債権者からご自身宛に連絡が入ることもありませんので、家族に知られる可能性も低くなります

任意整理では減額したい債権者を選ぶことができるため、ローンを支払い中のローン会社、普段利用している金融機関(銀行等)のローンなどを除外して整理できます。

任意整理のデメリット
  • ローンやクレジットカードの新規契約が一定期間できなくなる
  • クレジットカードが利用できなくなる
  • 担保が付いている物は没収される
  • 家族や友人が保証人の場合は迷惑がかかる
  • 訴訟(裁判)になる場合がある

任意整理最大のデメリットはローンやクレジットカードが一定期間作れなくなる、また利用中のクレジットカードが使えなくなることです。

これは信用情報機関に事故歴として登録されるためであり、最低5年間は借り入れやローンの契約は難しくなります。

また利用中のクレジットカードは任意整理の対象外とした場合はすぐに停止されませんが、いずれ、利用出来なくなる可能性があります。

任意整理する場合はクレジットカード払いから他の支払い方法(口座引落しや振込)へ切り替えしておきましょう

ローンを組み購入した物に担保が付いている場合、任意整理してしまうと、ローンで購入している物は没収される可能性があります(車のローンなど)。

家族や友人に保証人となっている場合、任意整理することで保証人へ借金の一括で請求されます。特に連帯保証人であれば、借金の全額を肩代わりしなければならなくなります。

任意整理では支払い中のローン、保証人や連帯保証人に迷惑がかかる借り入れ先(債権者)は除外できます。都合の悪い債権者は除外して任意整理しましょう。

任意整理を弁護士と司法書士に依頼する際の注意点

任意整理を弁護士、もしくは司法書士に依頼する場合の注意点として、借金総額が任意整理を考えている借金総額が140万円を超える場合です。

司法書士が対応できない任意整理とは

借金総額(1件あたり)が140万円を超える場合、司法書士は対応できません。司法書士が任意整理を対応できるのは借金総額140万円以下の場合のみと限られるためです。

複数の借金がある場合でも合算した借金ではなく、借り入れ先(債権者)1件あたりの借金が140万円以下であれば対応できます

また司法書士でも任意整理を取り扱えるのは認定司法書士であり、法務大臣より簡裁訴訟代理等関係業務が行えると認定を受けた司法書士となります。

弁護士であれば、140万円以上であっても制限なく任意整理に対応できますし、もし任意整理した際に過払い金が発生していた場合でも訴訟含め対応できます。

過払い金とは

利息制限法で定められた上限金利以上で借り入れしていた方が支払い過ぎた利息がある場合、過払い金として返還請求できます。

2006年12月以前から長期にわたり返済していた方であれば、過払い金が発生している可能性があります

過払い金も140万円を超えている場合、司法書士は対応できず、その場合は弁護士に再依頼しなければなりません。

また過払い金が140万円を超える場合で訴訟(裁判)となった場合も、司法書士は書類作成のみとなり、裁判所へ代理出廷できません。

つまり、任意整理依頼時に過払い金を含め、不明点が多い場合は弁護士に依頼したほうが不安なく手続きを進めることができると言えるでしょう。

まとめ

任意整理を弁護士、司法書士に依頼した時の違いですが、手続き等に関しては変わりありません。

しかし司法書士の場合、取り扱える任意整理は借金が1件あたり140万円以下に限られます。また任意整理で過払い金が発生していることが分かった場合、過払い金が140万円を超えた際も同様です。

任意整理であれば、法律相談も無料で行っている法律事務所も多いため、まずは無料相談を活用しましょう。

法律相談時にご自身の借金について把握しておけば、費用他、依頼できるかなどもわかるため、借り入れ先や契約状況、いつから借り入れしているか等、調べておきましょう

弁護士、司法書士に任意整理を依頼すれば、着手金(基本報酬金)の他、解決報奨金など費用が発生します。弁護士に依頼すると解決報奨金の他、減額報酬金も発生します。

司法書士で対応できる場合は司法書士に依頼することで、任意整理の費用は抑えることができます。

しかし弁護士であれば任意整理できる金額に上限がないだけでなく、裁判所への代理出廷もできるため、全て任せたい方であれば、弁護士への依頼は一択でしょう。