「自己破産すると家族はどうなる?」
「家族や同居人へはどのような影響があるの?」
これらは、借金の返済に苦しみ、自己破産をするかについて考えている人が抱える心配事として、代表的なものだと思います。
自己破産を考える人がこのような心配をするのは、自分の自己破産によって「だれにどのような影響を及ぼすのか」が分からないことが原因と考えられます。
この記事では、自己破産をすることで「だれに、どのような影響を及ぼすのか」を解説するとともに、家族や同居人への影響について情報を提供します。
しっかりと読みすすめれば、自己破産の方針を決めかねている人の参考になるはずです。
自己破産の影響について
ここでは、債務整理における自己破産手続きが及ぼす「影響」について解説します。
自己破産のマイナスの影響について再確認
自己破産をすることで「借金がゼロになるプラスの影響」はよく知られていますが、自己破産をすることでのマイナスの影響を正確に理解している人は限られています。
多くの人は、自己破産によって全借金が免除されるプラスの影響があることから、それと引き換えに大きなマイナスの影響があるといった程度に考えているのだと思います。
ここでは、自己破産のマイナスの影響を正しく理解するために、一般的に自己破産のデメリットとされている影響を取り上げて再確認していきます。
所有している財産は原則として処分される
自己破産を申し立てて免責されると持っていた財産は処分されますが、生活に最低限必要な資産価値が20万円を超えない預貯金や解約返戻金の生命保険などは処分されません。
ただし、貴金属・株式・ゴルフ会員権などの生活に必要でないものは、20万円以下であっても処分の対象です。
自宅や車などの担保物は処分される可能性がある
自己破産手続きを開始すると、債権者は担保権を行使して担保物を没収したり売却したりするのが一般的です。
住宅や車は担保にとられているのがほとんどなので、自己破産によって強制競売や引揚げなどで没収されます。
ただし、査定額が20万円を超えない車は、処分されることは少ないようです(地方裁判所によって異なる)。
クレカは強制解約され購入した高額商品は引き揚げられる
自己破産手続きを開始すると、契約済みクレカ(クレジットカード)は強制解約されます。
カードで購入した商品は代金完済までクレカ会社に担保にとられている状態なので、価値のある商品や高額商品は返却を求められるのが一般的です。
官報へ掲載される
自己破産をすると、裁判所での手続きの進行にともない、延べ3回ほど申立人の氏名と住所が官報に掲載されます。
ちなみに官報とは、国が発行する新聞のような媒体で、法律などの制定・改正などがあったこと、破産や相続などの裁判での内容などが記載されるものです。
ブラックリストに載るので新たな借入れは困難になる
自己破産をすると、「事故情報」として日本に3つある個人信用情報機関に登録されます。
これが、一般に言われる「ブラックリストに載った状態」です。
ブラックリストに載ると登録が抹消されるまでの7〜10年間、新たなローンやクレカの契約はできません。
資格(職業)によっては手続きが終るまで制限をうける
自己破産手続きをすると、一定の期間に限り資格を利用すること(職業に就くこと)が制限されます。
一般の人が自己破産をする際に問題になりえる具体的な資格としては、警備員、卸売業者、保険外交員、宅地建物取扱主任者などです。
保証人には影響がある
保証人を立てている借金がある場合に自己破産をすると、債権者は保証人に対して一括返済を求めます。
保証人との事前の調整ができていないのであれば、保証人を立てている借金を除外した債務整理の可能性を検討すべきでしょう。
自己破産は配偶者や家族の財産にどのような影響があるか
ここでは自己破産をすることで、配偶者や家族の財産にどのような影響があるかを解説します。
家族名義の財産は原則として守られる
自己破産すると、「家族の財産も没収されてしまうのではないか」と思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、自己破産した際に差し押さえられるのは、「破産手続き開始決定の時点で申立人が所有している財産」に限られます。
だれの財産かということは単に名義だけ決まるのではなく、実質的に判断されるものです。
したがって、配偶者や家族名義であっても実質的に申立人の財産と判断されると、配偶者や家族名義の財産が差し押さえられてしまうことがあります。
そうした場合には、本当の所有者である配偶者や家族は破産管財人に対して「取戻権」を行使できるので、弁護士に依頼して取り戻せる可能性はあります。
家族名義の預貯金は守られない可能性がある
申立人が家族名義で口座を開設していた場合、申立人の財産として扱うのか名義人の財産として扱うのでしょう。
これについては、「名義ではなく出捐者(預金をする金銭を出した者)を預金者と判断する」との判例があります。
したがって、もともとは誰の金銭を預金したのかといった具体的な事情に即して、申立人の財産なのかそれとも家族の財産なのかが判断されるのです。
たとえば、申立人が子供の口座に入金していた場合、名義人が子供であっても申立人の財産と見なされ、金額によっては資産隠しとして扱われることになるので、この点は留意する必要があります。
同様に、申立人が自分の子供の教育費や結婚資金などに充てるために子供名義で預貯金をしていた場合も、申立人の預貯金として扱われます。
申立人名義の財産で家族にも影響がある財産は
ここでは、自己破産で差押えを受けることで、家族にも影響を与える可能性が高い財産について紹介しましょう。
現金や財産
1品で20万円を超える財産や自由財産として99万円を超える申立人の財産は、換価(売却して現金に換えること)されたりします。
そのため、家族の生活費であっても申立人名義の貯蓄であれば処分されることから、家族にも大きな影響があるケースが考えられるのです。
貯金
自己破産をした人の貯金が差し押さえられるのは、保有している「すべての口座にある貯金の合計額が20万円を超える場合」です。
あくまでも「すべての口座にある貯金の合計額」が対象なので、保有している1つひとつの口座の預金額が少ない場合には見落としてしまいがちな部分です。
家(マイホーム)
マイホームを持っている人が自己破産をすると、ほぼすべてのケースでマイホームを失います。
ローンが残っている場合は債権者、ローンが残っていないときには破産管財人によって差し押さえられて返済に充てられることになります。
なお、「任意売却」ができると、競売によるデメリット(売却額が安い、周囲の人に知られやすい、引っ越し時期を選べないなど)を小さくできます。
車(マイカー)
自己破産をする人の車は差押えの対象になる可能性が高いのですが、次のような場合には、車を失わずに済む可能性があります。
- 査定額が20万円を超えない
- 新車登録から6~7年以上経過している
- 家族の介護に車が欠かせないといった事情がある
- 保有財産が極端に少ない
車の取扱いは、地方裁判所によって違いがあり、個別ケースの事情に左右されることも多いので、弁護士に相談すると良いと思います。
夫婦の一方が自己破産しても配偶者や家族の財産は処分されない
日本では「夫婦間における財産の帰属」について、民法第762条に次のように定められています。
- 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)とする
- 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する“
民法第762条
日本法令外国語訳データベースシステム – [法令本文表示] – 民法
また、自己破産をした場合に処分されるのは申立人の財産なので、夫婦の一方が自己破産した場合に、配偶者や家族の財産が処分されたり返済をしたりするようなことはありません。
しかし、配偶者が自己破産した申立人の借金の保証人や連帯保証人の場合は、支払いの義務が生じます。
申立人が自己破産をすると、債権者は保証人や連帯保証人である配偶者に返済請求をするので、申立人が返済できなければ配偶者が返済しなければなりません。
もし、配偶者も返済できないのであれば、夫婦でそろって自己破産しなければならなくなる可能性があるのです。
なお、申立人の自己破産は原則として配偶者の財産に影響しないとはいえ、財産の中には所有者が申立人か配偶者かが明確でないものが数多くあります。
特に共働きでそれぞれに収入がある夫婦の場合、一方が自己破産したときは、それぞれの財産が申立人の所有か配偶者所有かは簡単には区別できないのが現実です。
自己破産手続きにおいて申立人の財産の範囲については、だれが名義人かということだけではなく、それぞれの財産形成に対する貢献度なども考慮して、ケースバイケースで裁判所が決定します。
なお、こうした財産を所有している人は、自己破産を申し立てる前に、弁護士にしっかりと説明しておくことが必要です。
自己破産はだれにどのような影響を及ぼすか
ここでは、自己破産が「どのようなマイナスの影響を及ぼすのか」を、次の対象者ごとに紹介していきましょう。
- 家族
- 配偶者
- 子供
- 保証人
自己破産による家族への影響
自己破産による家族全体への代表的な影響は次の4つです。
- 家や車を手放すことになる
- 家族名義の財産が返済に充てられる可能性がある
- 家族が保証人になっている場合は家族が全額返済の義務を負う
- 7~10年間は新たな家族カードやローンを組めなくなる
以降に、これらの影響について1つずつ解説しましょう。
家や車を手放すことになる
家族にとって一番大きな影響は、家や車を手放すことです。
しかし、賃貸住宅であれば問題にならず、ローンが終わった車や査定価格20万円以下であれば没収されません。
なお、マイホームは、手続きを個人再生へ変更して「住宅ローン特則」を利用すると残せます。
家族名義の財産が返済に充てられる可能性がある
自己破産で債権者への返済に充てられる財産は、原則として申立人の財産に限られます。
とは言え、裁判所が選任した破産管財人は、できる限り多くの額を債権者に分配・返済することを考えるのが一般的です。
そのことから家族名義の財産であっても、実質的に申立人が所有者であると推測させる財産は、返済に充てられる可能性があります。
家族が保証人になっている場合は家族が全額返済の義務を負う
申立人の借金のなかに家族が保証人や連帯保証人になっているものがある場合、申立人が自己破産すると債権者は保証人や連帯保証人に返済を請求してきます。
申立人が自己破産した場合は、保証人や連帯保証人は法的に申立人の借金の返済義務を負わざるを得ないのです。
これを回避しようと思ったら、債務整理の手続きを変更するか、家族も申立人と一緒に自己破産するしかありません。
7~10年間は家族のための新たな家族カードやローンを組めなくなる
自己破産をすると申立人はブラックリストに載り、7~10年間はローンやクレカを利用できなくなります。
家族のために新たなクレカ(クレジットカード)、住宅ローン、フリーローン、教育ローンなどを申し込んでも、ブラックリストから抹消されるまでの期間は審査に通りません。
家族に一定の収入があると、家族名義でローンを組んだりクレカを作ったりなどは可能ですが、家族が専業主婦(夫)や未成年者の場合にはそれもできません。
自己破産による配偶者への影響
巷では、「申立人が自己破産した場合、保証人や連帯保証人になっていなければ、原則として配偶者に影響はない」と解説されているのが一般的です。
しかし、これでは解説が不十分で、実際には以降で見るように、配偶者にもさまざまな影響があります。
持ち家であった場合は引っ越しが必要
自己破産すると、持ち家に住み続けられないので、家族で引っ越さなければなりません。
住んでいた期間にもよると思いますが、住み慣れていればいるほど引っ越しは気重なうえに寂しいものです。
納得できる引っ越し先を見つけるのは手間のかかることなので、早い段階から着手しなければなりません。
また、子供の転校などが伴う場合は、引っ越し先の「物件」だけではなく「所在地」にも気を配る必要があります。
車のない生活もあり得る
自己破産すると、査定額が20万円を超える車は処分しなければなりません
そのため、自己破産後に車を手に入れるには、現金による購入か、配偶者や成人した子供名義でローンを組む必要があります。
配偶者も一緒に自己破産
共働きの家庭では、配偶者が連帯保証人になって住宅ローンを組むことは珍しくありません。
その場合、申立人が自己破産すると、配偶者がローン残額の返済請求を受けます。
配偶者がそれを支払えない場合は、申立人と一緒に配偶者も自己破産をするか、他の債務整理手続きへの変更が必要です。
家族カードが使えなくなる
自己破産後は、申立人のクレカは使えなくなります。
申立人がクレカを使えないのは、ブラックリストに載っている7~10年間です。
なお、配偶者が申立人名義の家族カードを利用している場合は、その家族カードも使えなくなります。
ただし、配偶者が配偶者名義で新たなクレジットカードへの申し込みは可能です。
自己破産による子供への影響
親が自己破産することで、子供にも次に示すようなさまざまな影響が及びます。
子供名義の学資保険は没収される
学資保険のなかには、子供名義になっているものが多く存在します。
子供名義であれば親の自己破産とは関係がないと思うかもしれませんが、実際に積立てをしているのは親なので、学資保険は子供の財産とは見なされません。
したがって、解約返戻金がある学資保険は申立人の財産として取り扱われ、手続きの中で清算されるのが一般的です。
なお、自己破産をすると、解約返戻金が20万円を超える保険については原則として解約されます。
学費の支払いが厳しくなる可能性がある
自己破産をすると、解約返戻金がある学資保険・99万円を超える現金・合計残高が20万円を超える預金などは没収されます。
そうしたことから、申立人の家庭では学費の支払いが厳しくなる可能性があり、次のようなことへの対応が必要です。
- 子供授業料が高額な家庭では、授業料の支払時期などについて学校側と調整が必要な場合がある
- 子供の進学の時期によっては、自己破産後の収入をもとに進学先の再検討が必要になる場合がある
- 子供に塾や習い事に通わせている家庭では、本当に必要なものに絞らなければならない場合がある
転校の可能性
持ち家に住んでいた場合、自己破産後は賃貸住宅などへ引っ越さなければなりません。
引っ越し先が離れた場所の場合、子供の年齢によっては保育園や幼稚園の転園、小学校や中学校の転校が必要です。
特に都市部では、転園や転校は簡単なことではないことから、新しい住まい探しは転校先探しでもあると受け止め、早い時期からの取組みが求められます。
精神的なケアが必要
自己破産は子供にも多くの影響を及ぼしますが、最も配慮しなければならないのは「精神面でのケア」です。
自己破産によって生活環境やリズムが大きく変わったり、精神的なストレスを感じたりするのは親だけではなく、多感な年ごろの子供です。
子供は引っ越しに伴う転校や、厳しい生活環境が始まることなどで、強烈なプレッシャーを感じます。
申立人である親は、そのことを十分に理解したうえで、子供の精神的なケアにも当たることが必要です。
自己破産による保証人への影響
ここでは、申立人が自己破産をした場合、保証人にはどのような影響があるのかを見ていきましょう。
申立人が自己破産をすると、その借金の返済義務は保証人に移ります。
そのことで、自己破産した申立人の配偶者が保証人だった場合は返済義務が配偶者に移り、債権者は保証人に対して、借金の残額に対する一括返済を求めるのが一般的です。
申立人が自己破産した借金を、申立人の配偶者が一括返済できるかというと、それは難しいものと言えるでしょう。
もし、保証人も返済が難しい場合には、申立人と同じように配偶者も自己破産することになってしまいます。
なお、保証人や連帯保証人を立てている借金がある場合は、自己破産の申立ての前に、手続きを委任する弁護士にしっかりと相談することが必要です。
自己破産の前にやってはいけないこと
自己破産の申立てを検討する際には、財産が処分されることに備え、さまざまな対策を講じる人がいると言われます。
そうした対策には、違法なものや違法とまではいえないものもありますが、対策の必要性を感じた場合は、まずは法律の専門家である弁護士などに相談すべきです。
家族や配偶者のことを考えて少しでも財産を残したい、そのような申立人の気持ちは理解できても、違法なことや違法の疑いのある対策は講じるべきではありません。
ここでは、自己破産の前にやってはいけない代表的なことを、4つ取り上げて紹介します。
自己破産前にマイホームを任意売却すること
自己破産前にマイホームを任意売却すること自体は、違法ではありません。
しかし、もし次のような任意売却をした場合には、自己破産の「免責不許可事由に当たる」として裁判所から免責されないので注意が必要です。
所有権は債務者が持っているので、自由に売却できると考えますが、任意売却には債権者の承諾が必要です。
なお、抵当権が設定されているマイホームには買手はつきません。
「詐害行為」とみなされる売却は、「差押えや処分を免れるために、財産を隠したり譲渡、売却処分したりすること」です。
そのため、マイホームを自己破産前に知人名義に変更して隠したり、勝手に売却したりすることは、詐害行為と見なされて免責されません。
偏頗弁済とは、特定の債権者にだけ偏って返済する不公平な返済のことで、債権者平等の精神に反する行為として免責不許可事由に当たります。
なお、住宅を売却して住宅ローンの返済に充てることは、偏頗弁済には該当しません。
しかし、売却して得た資金を住宅ローンの借入先だけではなく、他の債権者にも返済をした場合は、偏頗弁済と見なされて自己破産は認められないのです。
家族や配偶者のためであっても財産隠しは犯罪
家族や配偶者のためであるといくら主張しても、次のような行為は財産隠しと判断される可能性があります。
- 所有財産を裁判所に正しく申告しない
- 車などの名義を他人に変更する
自己破産の手続きは、借金を公平・平等に清算する手続きなので、申立人には「借金を免除される代わりにできる限り返済をする義務」があります。
その意味で、所有している財産を「裁判所に正しく申告しない」ことは、重大な背信行為(信頼や約束に背く行為)であると評価されてもおかしくないのです。
悪質な財産隠しであると判断されたときには、免責不許可になるだけでなく詐欺破産罪(債権者を害する目的で債務者の財産を隠したり壊したりする行為)に問われて刑罰を科されることもあります。
なお、差押えの対象となる財産については、破産手続き前に他人に譲り渡したり、安く売却したりする行為は、財産隠しや財産減少行為として問題視されるので、注意が必要です。
家族や一部の債権者だけへの返済も違法
自己破産に追い込まれる人には、家族や親戚から借金がある場合も少なくありません。
好意で金銭を貸してくれた家族や親戚に、自己破産をしたことで迷惑をかけたくないという思いは、とても理解できます。
そうは言っても,次のような対応をしてはいけません。
- 家族などからの借金を裁判所に申告しない
- 家族などからの借金を自己破産前に返済してしまう
自己破産はすべての借金を対象に手続きをしなければならず、金融機関ではない家族や親戚、知人からの借金も例外ではありません。
こうした債権者だけを意図的に除いて「債権者一覧表」を作成・提出した場合は、免責不許可になる可能性があります。
また、「家族や知人に必要以上の迷惑・心配をかけたくない」という思いがあっても、申立て前に「特定の借金だけ」を返済することも問題になる場合があります。
特定の債権者だけに優先的に返済することは偏頗弁済と見なされるので、破産管財人による否認権行使の対象です。
破産管財人による否認権とは、自己破産前に行われた「債権者の平等を害する行為」を事後に取り消すことを言います。
したがって、自己破産前に家族や知人にだけ返済をすると、破産管財人から「返済した金額を破産財団に返還するよう求められる」のです。
自己破産前に車に関してしてはいけないこと
車に関して絶対してはいけないことは2つあります。
1つは、ローン完済車はローン会社から没収されないことから、それを狙って「車のローンだけを返済すること」です。
この自己破産前の一括返済は、だれの資金を使って行われるかによって、合法にも違法にもなります。
家族や親族などの第三者に一括返済してもらう「第三者弁済」は合法ですが、申立人の資金での一括返済は偏頗弁済なので、自己破産による免責を受けられません。
もう1つは「車の名義を変更すること」です。
自己破産で没収されるのは申請者が所有している財産だけで、配偶者や他の家族が所有している財産は没収の対象ではありません。
だからといって、手続き直前や手続き中に、申立人名義の車を家族など第三者の名義に変更することは、絶対にしないでください。
こうした行為は「財産隠し」と見なされ、免責を受けられなくなり、最悪の場合は刑事事件として取り扱われる可能性があります。
会社や家族に内緒で自己破産をすることは可能か
自己破産を検討中の方が、弁護士へ相談する際に多い質問は、「会社にバレませんか?」「家族にバレませんか?」だ、と言われています。
これは自己破産に関連して「自己破産をすると、会社をクビになる」「自己破産が配偶者にバレると、離婚問題に発展する」といった心配によるものと考えられます。
ここでは、会社や家族に内緒で自己破産をできるかどうかについて解説します。
自己破産をしても、会社には知られない
「自己破産をしたら、会社や家族に知られてしまう」と思っている人は多いようですが、実際には、自己破産の事実を会社に知られることはまずありません。
申立人(本人)や債権者、さらには裁判所のいずれからも、自己破産したことを勤務先に連絡することはなく、そもそも連絡する必要性がないからです。
また、自己破産を考えている人のなかには、会社にバレるとクビになると思っている人がいますが、たとえバレたところで本当にクビになるようなことはありません。
就業規則に、解雇理由として「自己破産をした者」といったことを定めている会社など、実在しないのです。
とは言え、「絶対会社に絶対にバレない」ということではなく、次のような場合には会社に知られる可能性はあります。
- 会社から借金をしている場合
- 会社の労働組合などを通じて金融機関から借金をしている場合
- 会社から「退職金証明書」の取得が必要な場合
- 官報に公告された氏名を会社の社員などに見られた場合
家族にバレないように自己破産するのは難しい
自己破産したことが、裁判所や債権者から家族に通知されることはありませんが、自己破産の手続きを同居している家族に内緒で進めるのは難しいです。
内緒で自己破産をしたくても、次のようなことから、ほぼ確実に家族にバレてしまいます。
- 家族が保証人になっている
- 家族から借金している
- マイホームがある
- 査定額が20万円以上の車がある
- 配偶者の収入証明が必要になる
- クレカやローンを利用できなくなる
これらのことから分かるとおり、一緒に生活している家族に内緒で自己破産をするのは不可能です。
このように自己破産のことが家族にバレることはほぼ確実なので、家族に内緒で自己破産をするよりも、正直に説明をして理解を得たうえで自己破産をすべきだと言えます。